人の命を守る仕事とは?
人の命を守る仕事、人のためになる仕事がしたい。そのような思いから医歯薬学の道に進む研究者は多い。特に医学は直接患者の命を守る最前線の仕事である。一方で、とある大学医学部の先生からいただいたお言葉、
「医師は目の前の患者を救えるが、生涯で100万人が限度。命を救ったといえるレベルではない大多数の軽症患者を含んでの人数である。しかし新薬や新技術は自分の死後も含めると可能性は無限大だ。」
という言葉が心に響いた。
そうだ!薬学の研究で人類に貢献できる仕事をしよう!
そう思って研究に取り組んでいる新進気鋭の若手研究者の一人が、大阪大学高等共創研究院・産業科学研究所の山崎聖司准教授だ。彼は「細菌」という人類にとっては薬にも毒にもなるきわめて原始的な生命体に着目して研究を続けている。
山崎准教授は大阪大学薬学部から平成22年に大学院薬学研究科修士課程、続けて博士課程に進学し、平成27年に博士(薬科学)を取得した。博士後期課程の間、日本学術振興会特別研究員DCとしても3年間研究に従事した。実際の研究活動は、学部生時から大阪大学産業科学研究所にて、薬学研究科の協力分野への配属という形で進めてきた。
「子どもの頃によく抗生物質(微生物が産生する物質の総称を示す広義の意味ではなく、一般的にイメージされる抗菌作用のある薬という意味で“抗生物質”という言葉を用いている)のお世話になっていたことに加え、抗生物質の開発は利益率の低下により、もはや民間では行えず、大学で進めなければならない緊急事態となっていることを知り、薬学部・薬学研究科の協力分野である産業科学研究所の山口明人教授(現:西野邦彦教授)の研究室の門を叩いたのが、今の研究のスタートです。」
山崎准教授は博士課程修了後、引き続き同分野の研究を継続すべく、大阪大学産業科学研究所の西野研究室の助教として着任し、平成31年より大阪大学高等共創研究院の准教授として、また同大学の産業科学研究所、大学院薬学研究科ならびに令和5年度より感染症総合教育研究拠点を兼任する形で、現在も忙しい毎日を送っている。 「現在は、ヒトに害を為す細菌・有用な細菌を含めた、全ての細菌とうまく”お互い攻撃し合うことなく共に生存していく(共存)”・“共に助け合って生きていく(共生)”ための新たな学問が必要と考え、
(1)病原細菌の病原性・定着性を抑えて耐性菌出現を抑制しヒトとの新たな共存関係を構築する
(2)腸内細菌の活動を制御することでヒトとのより良い共生関係を構築する
という2つの目的を設定した研究室である“細菌共存学研究分野”を立ち上げました。SDGs 目標3である、“すべての人に健康と福祉を“の達成を目指しています。」