黒田俊一教授との出会い
生物を構成する主要成分の一つであり、薬剤としても使われるタンパク質。これを自由自在にデザインし、多種多様な機能を持たせる、体内の目的の場所で目的の機能を発揮させる、そんな夢のような研究に取り組んでいるのが、大阪大学産業科学研究所の曽宮正晴准教授だ。
曽宮准教授は北九州高専の物質化学工学科、そして同専攻科を卒業し、名古屋大学大学院農学研究科へと進学した。「高専時代から、ヒト細胞をつかったタンパク質生産の研究をしていました。これを利用して、体内で縦横無尽に働くナノマシンのようなDDS(ドラッグデリバリーシステム)を構築したいと思ったんです。」懐かしそうに曽宮准教授は振り返った。
修士課程・博士課程で指導教員となったのが、現在の研究室のボスである黒田俊一教授であり、このころから今でもDDSは研究の大きな柱の一つとなっている。
博士の学位を取得後、細胞外小胞の研究で著名な、国立がん研究センターの落谷孝広博士(現・東京医科大学特任教授)の下にて研究者としての基礎を学んだ。
2017年6月、大阪大学産業科学研究所(阪大産研)に移った黒田教授から曽宮准教授に『また一緒にやらないか』と声がかかる。曽宮准教授は「学振SPD(日本学術振興会 特別研究員-SPD)に採用が内定した直後だったので、とても悩みました。でも勝手知りたる黒田先生の下なら、のびのび研究できるかなと思って移る決断をしました。」そう言って笑った。
再び黒田教授の下で研究をスタートした曽宮准教授、2022年から2年間、米国ワシントン大学のデイヴィッド・ベイカー教授(2024年ノーベル化学賞受賞)が所長を務める研究所で研究するという貴重な機会も得ることとなる。

