人に惹かれ、ご縁がつないだ研究の道
「生きているとは、そもそも何だろうか」。誰もが一度は抱く根源的な問いに対し、アメーバをはじめとする原生生物のミクロな「動き」を通して生命の隠された原理に迫ろうと、独自の探求を続けているのが北海道大学電子科学研究所の西上幸範准教授だ。
大阪府高石市で育った西上准教授は、学部から博士課程まで一貫して兵庫県立大学で学んだ。2008年に理学部へ入学し、生命科学を専攻。もともと「研究がしたい」という思いが強く、研究室選びの基準も「面白い研究ができるか」だったという。
いざ研究室に入ってみると「“人”に惹かれました。楽しそうに好きなことをやっている人が面白い研究をしていました。自分もそのような環境に身を置きたいと思ったんです。」
学部・大学院時代に取り組んだのは、アメーバ運動の研究だった。当時所属していた研究室は植物のラボだったが、准教授の先生がアメーバを飼育しており、そこから研究が始まった。生化学を軸とした研究を進める中で、次第にある疑問が芽生えていった。 「タンパク質をいくら詳しく調べても、私自身は“生き物を理解した”感じがしなかったんです。生きているって、そもそも何だろう。」
博士課程2年の頃、京都大学理学部物理学教室へ短期間の共同研究に出向いた。この経験が、その後の研究人生を大きく方向づける。物理の視点から生命現象を捉え直す試みの中で、西上准教授は「人工アメーバ」をつくる研究に取り組んだ。タンパク質をアメーバから取り出し、人工細胞に封じ込めると、ぷにぷにと“生き物らしく”動き始める。その様子に、強い感動を得たという。 「生き物を部品に分けて考えるだけではなく、どう組み合わさって“動き”が生まれるのかを見ることが大事だと実感しました」
大学院生のころには、原生生物学会若手の会会長も務めた。そこで主催した講演をきっかけに中垣俊之先生と交流を持つなど、人との縁が次の研究へと自然につながっていった。博士取得後、京都大学でポスドクをしていたころに北海道大学電子科学研究所から原生生物関連の公募が出たことを知り、「これは自分のための募集ではないか」と思い込み応募し、着任に至った。
分野や組織に縛られず、問いに正直に進んできた道のりが、現在の研究スタイルを形づくっている。

