一冊の本がきっかけで研究者に
高性能な材料開発には、ナノスケールでの構造解析が欠かせない。構造解析に使う電子顕微鏡やX線顕微鏡では、照射することで構造が変化してしまうなどのダメージが生じてしまい、物質本来の持つ姿が見えない。徐々に変化してしまう物質の本来の姿を、フェムト秒という一瞬の世界で捉えることに成功し、注目されているのが北海道大学 電子科学研究所の鈴木明大准教授だ。
「元々は研究者志望ではなかったんです。大学入学当初は授業も出ずにサークル活動を少しやっていたくらいで...」、そう語りながら、北海道大学 電子科学研究所の鈴木明大准教授は照れ臭そうに笑った。鈴木准教授は大阪大学工学部応用自然科学科で学生生活の4年間を過ごした。あるとき、砂川重信先生(大阪大学名誉教授)の電磁気学の一冊に出会い、鈴木准教授の人生を変えることとなる。物理学は天下り的にこの世にあるモノではなく人間が作ってきた文化であると気づき応用物理の道に目覚め、電磁気学と関連する光学の研究を志すようになった。
今年度から学部1年生向けの電磁気学と熱力学の授業を担当することになった鈴木准教授は、今でもこの教科書を書庫から取り出し「この本、好きだったな」と振り返ることがあるそうだ。
大学卒業後、大阪大学大学院工学研究科精密科学・応用物理学専攻(現 物理学系専攻)に進学し、修士および博士の学位を取得した。2016年に北海道大学電子科学研究所の助教に着任した鈴木准教授は、一貫してX線イメージングの研究に取り組み、2021年には准教授に昇任している。