インタビュー

#11 長谷川拓哉准教授

ON × OFF Interview 挑戦者たちの素顔

挑戦者たちの素顔 長谷川 拓哉 メイン 挑戦者たちの素顔 長谷川 拓哉 メイン

無機材料に魅せられて
出会いが研究の幅を広げる

#02長谷川 拓哉

HASEGAWA, Takuya
東北大学多元物質科学研究所
CHAPTER 1

“研究”と”開発”の違いに気付き”研究者”に

セラミックスや蛍光体など幅広い応用があり、高い機能性や耐久性などから今、世界的に注目されている無機材料。その魅力に取りつかれ、研究に邁進しているのが、東北大学多元物質科学研究所(多元研)の長谷川拓哉准教授だ。

山形県出身の長谷川准教授は新潟大学工学部応用化学科を卒業し、大学院博士前期(修士)課程に進学した。 「実は修士の学位を取得して一旦、就職したのですが、“大学院時代に中途半端で終わってしまったな”の気持ちが捨てられなかったんですよね。」はにかみながら、長谷川准教授は話を続けた。

いざ企業で開発の業務に就いたものの、そのゴールの明確さに戸惑いを感じつつ“研究には自由度がある”ことに気付き、改めて自身の研究者魂に火が付いた。修士時代の恩師であり、後の博士論文の主査となる戸田健司准教授(当時:現教授)や佐藤峰夫教授に相談し、会社を退職、大学院博士後期(博士)課程への入学を決意する。 「結構本気!死に物狂いでした。」当時を振り返る長谷川准教授の眼は、一段と鋭さが増した。

発光材料・蛍光材料など、無機結晶の構造と物性の関係性を学部から大学院まで一貫して研究していた長谷川准教授は博士の学位取得後、無機材料の知見を請われて高知大学の上田忠治教授の研究室で助教としてアカデミアな研究者としてのキャリアをスタートさせることになる。

CHAPTER 2

結晶の構造や配列に魅せられて

 

三年間、四国の地にて研究と教育のキャリアを積んだ長谷川准教授は現在の研究室主宰者である殷教授とのご縁から東北大多元研に研究の舞台を移すことになる。
 引き続いて無機材料に関する研究を継続することになった長谷川准教授であったが、扱う材料は近いもののその応用がかなり異なることから、当初は戸惑いの連続だったそうだ。
 「殷研究室が強い応用研究は自分の弱みでもある。もう少し修行したいな・バリエーションが広がるかな、修業期間だし開き直ろう!」常に前向きな長谷川准教授らしい発言である。結晶の構造や配列と物性の研究を続け、そのアプリケーションの一つとして蛍光があり、これらを巧く融合して成長を続けたことが、今の長谷川准教授の研究のベースとなっている。
 「実は、元ボスの固体化学の講義、単位落としてしまっていたんですよね。でも、そんな自分がそのボスの研究室に入り、ちょっとずつ構造解析やったら面白くて、解けたときは気持ち良いんです。」 この思いが今に続いているそうである。

現在のボスである殷教授は学生や教員の意見を尊重し自由度を与えてくれるので、とても感謝しているとのこと。
「蛍光物質の環境応答性に関する研究例は、まだあまりありません。セラミックス協会で光セラミックのオーガナイザーをやっているが、フォトセラミックスセクションでも他にいない、新しいことをやっているという自負があります。」目を輝かせて長谷川准教授は話を続けた。
「飽き性なんですよ、同じことをずっとできない性分で。多分、この研究にゴールはないと思います。だから、散らからない程度に研究を広げているんです。」笑いながらそう話す長谷川准教授であるが、常に新しいものを発見・開拓したいという思いと、適度なところで止めるという両面のバランスを持ち合わせていることが理解できる一言だ。
「アイディアを考えるのが大好きです。お金儲けして贅沢な暮らしをしようとか、そこに執着はありません。アイディアどおりにいったら気持ち良いんです。仮説が立証できたら嬉しいんです!」

CHAPTER 3

出会いで培われた研究魂

 

長谷川准教授は、アライアンス活動にも積極的に関わってきた若手研究者の一人だ。「人と知と物質で未来を創るクロスオーバーアライアンス」は、2022年度から第3期として活動を開始しているが、長谷川准教授は初年度より「若手フィージビリティスタディ(FS)課題研究」を活用している。 「実在蛍光体応用の用途開拓をやりたかったんです。結果、環境分野への応用が広がるなど、まいた種が今でもつながっています。」

 同じくアライアンス活動に積極的な、奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科(兼 大阪大学 産業科学研究所 招へい教授)の後藤知代教授は共著論文を出すなど、研究上のつながりは強いそうだ。また、多元研内では、岩瀬和至准教授とは日本化学会東北支部で様々な仕事を一緒にしており、相互に信頼を寄せる仲なのだそうだ。
「住まいが近所で、お花見で酔ったときにタクシーで送って貰ったことがあるくらいです。」

“人生は経験也”を座右の銘とする長谷川准教授は、異分野との交流にも積極的だ。
「材料とMI(マテリアルインフォマティクス)はつながっています。蛍光と電池、基礎レベルは一緒です。自然科学をベースにすれば、物理と化学に帰属します。異分野と言っても、どこかでつながっています。隣の隣くらいと橋渡しするくらいの研究をやってみたいです。」山形・新潟・高知・仙台と様々な土地で様々な出会いがあり、様々な研究に触れてきた長谷川准教授だからこそ語れる話だろう。
「やってみなければわからない、だめならだめでそれは良い。とにかくトライしてみる。」そう笑った。

CHAPTER 4

興味の対象は限りなく

 

将来どのような研究者になりたいか?そう問うと、長谷川准教授は真っ先に二人の名前を挙げた。 「新潟大時代の佐藤峰夫先生のようなアカデミックな研究者が理想。多元研では(既に退官された)山根久典先生。引退するまで、実験をゼロにはしたくない。自分でやりたいときにできる研究者になりたい。デスクワークだけの研究者ではなく、自分で手を動かしたい。」その台詞は力がこもっていた。

 今後チャレンジしてみたいことを尋ねると、理論・計算科学と自身の研究を融合させたいとのこと。 「何にでも興味を持って取り組みます。自分の研究領域だけに固執がある訳ではありません。どんな領域であれ、自身の研究が役に立つことがあれば、それが一番です。時には行き当たりばったりで、都度、勉強することになりますが、それも楽しいです。」
今後の長谷川准教授の活躍が実に楽しみだ。

OFFTIME TALK

  • ウィークエンドの過ごし方

    家族で行った高知旅行

    オフは家族サービス

    休日は家族と過ごしています。上の子が小学校一年生の男の子の双子です。下は年少の長女です。温泉が好きなので、家族で秋保や愛子などのお湯を楽しむこともあります。
    温泉やサウナ・シャワー・お風呂に入っているときに、ふと閃くこともあるんです。

  • 自作のPC

    自宅の自作スケルトンPC(机の下)

    ”つくる”ことが大好き

    子供のころから、レゴとかプラモデルとか、何かをつくることが大好きでした。ガンプラにはハマりました。 職場で使っているPCもAmazonやドスパラでパーツを購入して組み立てたものです。
    結果として、自分で装置をつくるのに役に立っています。

  • ラーメン

    絶品!「たかはし」の担々麺

    ラーメンとともに生きる!?

    ラーメン、大好きです!
    地元は山形で大学が新潟ですから、ラーメンと一緒に生きてきたようなものです。地元山形の味噌ラーメンが大好きです。
    多元研の近くの担々麺店「たかはし」は、11:30の開店時間に行くほど、ハマっています。

長谷川 拓哉HASEGAWA, Takuya

インタビュー