「なぜだろう」が出発点 ー 固体酸触媒との出会い
ポストリチウムイオン電池として世界的に注目される全固体電池や全固体フッ化物電池、塩化物電池。その新たな電解質・電極材料の開発に挑んでいるのが、九州大学先導物質化学研究所(先導研)の猪石篤准教授だ。
もともと、猪石准教授が大学を志したのは教育への関心からだった。「中学の部活の顧問の先生が本当に熱い方で、生徒に真剣に寄り添ってくれる姿に憧れました。学校の先生になろうと思って東京学芸大学に進んだんです」。しかし研究との出会いが、その進路を大きく変えることになる。
転機は学部4年で研究室に入ったときだった。固体酸触媒を研究する中で、「非常に強い固体酸性を示す現象」に遭遇する。「なぜそこでそれが出るのか、理由がわからない。でも、その謎がとにかく面白くて」。答えの見えない問いに向き合う日々は、授業で習う「答えのわかっている実験」とはまるで違う体験だった。「誰も知らないことを自分で明らかにしていく——その感覚で世界が変わりました」。
様々なファクターを一つひとつ検証し、材料の作り方や組成を微妙に変えながら分析を重ね、「おそらくこの説明が最もリーズナブルではないか」というところまで整理したのが修士論文となった。「当時、研究がとても楽しかったのを覚えています。元旦以外は実験していました(笑)」。
文献調査に時間をかけすぎず、直感で「これはどうだろう」と手を動かしながら研究の方向を探る。「実験中に当初の狙いから脱線して、それがメインになったこともあります。人がまだやっていないところは、実験の中で見つかることが多い。研究者としての"勘"は、今も大事にしています」

