インタビュー

#05 鈴木明大准教授

ON × OFF Interview 挑戦者たちの素顔

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“見たい”に応えたい!
異分野交流が成長の糧に

#05鈴木 明大

SUZUKI, Akihiro
北海道大学 電子科学研究所
光科学研究部門 准教授
CHAPTER 1

一冊の本がきっかけで研究者に

高性能な材料開発には、ナノスケールでの構造解析が欠かせない。構造解析に使う電子顕微鏡やX線顕微鏡では、照射することで構造が変化してしまうなどのダメージが生じてしまい、物質本来の持つ姿が見えない。徐々に変化してしまう物質の本来の姿を、フェムト秒という一瞬の世界で捉えることに成功し、注目されているのが北海道大学 電子科学研究所の鈴木明大准教授だ。

「元々は研究者志望ではなかったんです。大学入学当初は授業も出ずにサークル活動を少しやっていたくらいで...」、そう語りながら、北海道大学 電子科学研究所の鈴木明大准教授は照れ臭そうに笑った。鈴木准教授は大阪大学工学部応用自然科学科で学生生活の4年間を過ごした。あるとき、砂川重信先生(大阪大学名誉教授)の電磁気学の一冊に出会い、鈴木准教授の人生を変えることとなる。物理学は天下り的にこの世にあるモノではなく人間が作ってきた文化であると気づき応用物理の道に目覚め、電磁気学と関連する光学の研究を志すようになった。
今年度から学部1年生向けの電磁気学と熱力学の授業を担当することになった鈴木准教授は、今でもこの教科書を書庫から取り出し「この本、好きだったな」と振り返ることがあるそうだ。

大学卒業後、大阪大学大学院工学研究科精密科学・応用物理学専攻(現 物理学系専攻)に進学し、修士および博士の学位を取得した。2016年に北海道大学電子科学研究所の助教に着任した鈴木准教授は、一貫してX線イメージングの研究に取り組み、2021年には准教授に昇任している。

CHAPTER 2

フェムト秒の刹那で、“見たい”を“見える”に

 

鈴木准教授に研究内容について質問すると、「すぐに社会問題の解決に繋がるような研究ではないので」と謙遜するが彼の技術は今、世界から注目されている。鈴木准教授はいま、フェムト秒X線レーザーを利用した新規イメージング法の開発に取り組んでいる。
レントゲンによって発見されたX線は、病院での診断で広く使われ、可視光に比べとても波長が短い光で、原子や分子のレベルで物質の微細構造を観察するのに利用されている。しかしながら、原子や分子の瞬間的な動きを観察するためには強度が足りない。他方で、なんとか微弱な信号を得ようとX線を当て続けると試料が壊れてしまい、物質のありのままの姿を捉えることはできない。壊れる直前の物質の姿を捉えることができれば、今まで“見たい”と思っていたものが“見える”ようになる、そう強い信念を持ち、鈴木准教授はX線レーザーイメージングの研究のため、理化学研究所放射光科学研究センターに通い詰めた。

X線レーザーを照射した瞬間の、壊れる直前の姿を捉えることはできないか、そんな発想から鈴木准教授らのグループはフェムト秒、即ち千兆分の1秒という非常に短い発光時間のX線レーザー照射技術を開発し、正に「今まで見えなかったものを見えるようにする」技術を生み出した。さらに一連のデータ処理プログラムを開発し、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」を用いて、溶液中のナノメートルサイズの粒子の3次元観察の実証に成功し、世界的にも注目を集めている。

「大型研究施設を利用して初めてできる研究であり、世界最先端の研究インフラがある日本だからこそ成し得た研究成果です。」鈴木准教授は胸を張る。この技術をさらに発展させ、タンパク質の単粒子解析や金属ナノ粒子の液相成長のダイナミクス観察につなげたい、鈴木准教授の研究意欲は尽きない。 「この研究インフラを次世代にも引き継げるよう、論文として成果を出すことはもちろんですが、科学の社会的な理解を深める活動もしていきたい。」そう語る鈴木准教授の眼は輝いていた。

CHAPTER 3

異分野交流大歓迎♪ アライアンスがその後押しに!

 

北海道大学に着任以来、鈴木准教授は“クロスオーバーアライアンス”での活動にも積極的に参加してきた。その一つがアライアンスの分科会への積極的な参加だ。アライアンスのG3(生命機能)グループの分科会で出会った東北大学多元物質科学研究所の上杉祐貴助教(写真右)とは年齢や家族構成が近いこともあり、研究の話はもちろん、プライベートな話でも盛り上がることが多い、そう鈴木准教授は再び笑顔を見せた。鈴木准教授と上杉助教は、アライアンスの支援プログラムである「若手フィージビリティスタディ」に採択され、「単粒子X線イメージング用グラフェン支持膜のフェムト秒レーザークリーニング」の課題に取り組んでいる。「研究分野の垣根を超えた研究者がたくさんいるのが電子研やアライアンスの魅力のひとつ。ここで得た人材交流が、今の研究開発の後押しとなっています。」

鈴木准教授は今後の異分野交流、融合研究にどのような期待を持ち、自身の研究をどのように発展させたいと思っているのだろうか?「手法開発研究なので、私の手法に興味を持ってくれる方であれば装置開発・データ解析・試料提供など、どのような立場の研究者であっても共同研究を進められる可能性があると考えています。ですので、異分野交流は大歓迎です。」積極的に外部とのコラボレーションに取り組む鈴木准教授らしい一言である。

「請われれば一差し舞える人物になれ」、梅棹忠夫のことばが好きだという鈴木准教授は企業との共同研究も多い。例えば大手自動車メーカーの協力の下、X線自由電子レーザーによる観察技術を全固体電池用の硫化物系固体電解質に応用し、「SACLA」を用いて無損傷かつナノスケールで観察することに成功している。

CHAPTER 4

“見たい”に応えられる研究者に成長したい

 

鈴木准教授の技術の理想形は、「大きいモノを小さいところまでみる」ことだと語る。フェムト秒のX線レーザー照射により、物質のありのままの姿を捉える技術を開発してきた鈴木准教授だが、「まだまだ、今まで見えなかった“見たい”モノを見えるようにしたい」「純粋な、“これが見たい”の声に応えたい」と意気込む。

一人で自己完結する研究よりは、「共同研究でワイワイと楽しくやれていると嬉しい」と語る鈴木准教授は、「専門分野が異なる研究者のアプローチの仕方や、“これが見たい”という強い思いは、自分がついつい決めつけてしまう技術の限界値を超えています。それに応えてこそ、科学者かなと。とはいえ、正直なところ簡単ではないですが・・・笑」と、はにかみながらも熱き思いを口にした。

将来的には結晶構造解析とイメージングの間を埋めるような、新しい計測・イメージング手法を開発していきたい、そんな鈴木准教授の夢が実現する日は、そう遠くないのではないだろうか。

OFFTIME TALK

  • ウィークエンドの過ごし方

    子供と一緒におでかけ

    夏も冬もアウトドア

     札幌には個性が異なる大きな公園がたくさんあるので、近所でも楽しめます。また、車を少し走らせば海でも遊べます。

     夏場は家族や友達を集めて一緒にBBQをやるのが楽しみの一つです。冬場はMyそりで雪遊びを楽しんでいます!

  • ティーブレイク

    No Beer, No Life

    毎日のビールでリフレッシュ

     車通勤するようになり、ランチを外で食べられるようになって自身のQuality of Lifeが上がりました。お気に入りのお店は、八軒にある「四季 武むら」さんです。また、こだわりや知識はそれほどありませんが、ビールは息をするように毎日飲んでいます。

  • 猫との暮らしを夢見て

    これで5kg痩せました!

    リングフィットでダイエット

     3年くらい前、自宅でできるリングフィット(フィットネスゲーム)で5 kg以上痩せました!今も時々やっています。子どもとの暇つぶしも兼ねられるので、ジムに行くなんか夢、おままごとはもうキツイ・・・っていう子育て中の研究者の方におススメです。

鈴木 明大SUZUKI, Akihiro

北海道大学 電子科学研究所 光科学研究部門 准教授

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